2年ほど前だったか、
家を飛び出したことがありました。
夫と何かで言い争い、
一世一代の “ 今!”とばかりに、玄関を飛び出しました。
争いの原因は何だったのか。。
すぐ忘れてしまうような些細なことだったのか、
解決しようもない、どうしようもないことだったのか。
どちらなのかも覚えていないけれど、
ともかく、そのときの私には、
家を飛び出すくらいの衝動が湧きおこっていました。
もう!やってられない!!
お財布と携帯電話だけ握りしめ、
バン!と玄関の扉を開け放ち、
近くの大通りまで走り出たところで、
後ろを振り返ると、そこには誰もおらず。。
なんか、テレビの見すぎだな。。
急に冷静になって我に返ったあと、
追いかけてこない夫に、また腹が立ってきました。
いったい何をしているんだ!
ちょっと確かめてやろうと、忍び足で家に戻り、
敷地の塀を伝って、窓から中を覗いてみると・・
なんと!
平然とした顔で、
淡々と夕はんの準備をしている夫!
「おなか減ったねー。やっと食べれるねー」
なんて言いながら、娘と一緒に食器を並べている。
嵐が去った後のような、どこか平和なその光景。。
ムッとしながらも、
窓からしばらく眺めていると、
だんだん空の上から二人を眺めているような
妙な感覚になっていきました。
私のいない食卓に、立ちのぼる湯気。
私がいなくても、この二人はうまくやっている。。
怒りや衝動が、徐々におさまり
なんだか安心感のようなものが芽生えてきました。
ごはんが終わったころ、
「ママ、帰ってこないね」と言う娘に、
「たぶん、近くにいると思うよ」
と言う夫の言葉にドキッとしながらも、
片付けをする二人の後ろ姿を、息を殺してじっと見ていました。
私もだんだんお腹が減ってきて、
二人がお風呂に入ったすきに
家に忍び込もうとしたところ、
娘に見つかり、
私の逃亡劇(?)はあっさりと幕を閉じました。
(娘は涙を流して喜び、私も申し訳なさで一緒に泣き、夫はわらっていた。。)
犬も食わない茶番劇、と言えばそれまでなのですが。。
今でもふと、あの光景を思い出す。
母目線なのか、妻目線なのか、空から目線なのか、
なんだかよく分かりませんが、
ただ、二人が仲良くやっている様子を見て
妙な安堵感があったのです。
私のいない2時間ほどの時間、
少しさびしそうにしながらも
娘も夫もちゃんと自分たちで生活して、私の帰りを待っている。
そんな様子をこっそり見れたことが、
なんだかうれしかったのかもなぁ。
(あとで夫に聞いたところ、近くにいるとは思っていたけれど、
まさか自分たちが見られているとは思わなかったそうです。)
・ ・
こんな話を思い出したのは、
昨日の夜、一人で映画を観たからでした。
『アイ'ム ホーム 覗く男』という、2016年のアメリカ映画。
中年の男が
ある日、仕事と家族との生活をやめ、
向かいの納屋の窓から、残された家族を観察し始めるというお話。
いつしか家族と自分、さらには人間の考察へと続き。。
途中、コメディっぽくなったり、シリアスになったり、
さらには壮大なテーマにまでひろがって、
なんとも言えない不思議な映画でした。
その先は、ハッピーエンドかどうなのか。
ぜんぶ終わってみなければ、わからない。
・ ・ ・
今朝の空。
今日はひさしぶりに、晴れそうです。