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金沢の街中の小さな家で、毎日をたのしく、気持ちよく。

Yさんのこと。

 

ふと、Yさんのことを思い出す。

 

Yさんは、近所に住んでいた若いお母さんで、

なんとなく人を寄せ付けない雰囲気がありました。

けれど、少し話してみると、とても落ち着いていて、

私より十は離れているはずなのに、ずいぶん大人に見えました。

 

はじめて家に上げてもらったとき、部屋の中の雰囲気も独特で、

話す言葉の一言一言が、なんだか浮世離れしつつも

核心をついてるように感じました。

 

「もしかして、いろいろ見える人?」と聞いてみると

Yさんはハッとした顔で、

「私、変なこと言っちゃってる?」と急に動揺し始めました。

「ずっと、変わったこと言ってる」と言うと

あぁ、と諦めた様子になり、

あのね、と淡々と話をしてくれました。

 

Yさんは、物心ついた頃から

人のもつ色が、ぼんやりと見える人だったらしい。

そのことで、母親をずんぶん困らせ、

本人もつらい思いをしてきたそう。

 

私にはそんな能力がないので、

それがどんな感覚なのかよくわかりませんが

そういう人もいるだろうなぁとぼんやり思っていたので

あまり驚きませんでした。

 

Yさんの独特の雰囲気、話す言葉を聞くと、

むしろ、なるほどなぁと納得しました。

 

私はYさんのことが好きだったので、

なるべく会いすぎないように

どうしても会いたいときだけ会いに行くようにしていました。

 

Yさんも、たまに子どもを連れて遊びに来てくれました。

夕方、夫が帰宅するとき、いつも電話を3コールするのですが

その着信音を聴いて「愛だね〜」とYさんは言いました。

「遊ぶお金がないから、まっすぐ帰ってくるの」

と私はぶっきらぼうに答えました。

 

Yさんがとても疲れた顔をしていたある日、

一晩子どもたちを預かることにしました。

 

Yさんのご主人は夜遅いお仕事なので、

今晩は一人でゆっくりしてねー、と見送りました。

 

翌朝、子どもを迎えに来たYさんに、

ゆっくりできた?と聞くと

「明け方まで “ プリティ・ウーマン ” 観ちゃったよ」

と、ちょっと恥ずかしそうに答えました。

 

それから、なんとなく会わない日が続き、

ある日、Yさんは突然いなくなりました。

 

届いたのは、

ご主人と別れ、新しい生活をするというメッセージ。

 

びっくりしつつも、

なんとなく腑に落ちるところもありました。

 

共通のママ友は、

こんなことになる前にいろいろ相談して欲しかったと

ちょっと声を荒げていましたが、

私はただ、Yさんが遠くへ行ってしまったのが寂しかった。

 

あの夜に一人で観たと言った映画のことや、

私の夫の帰るコールに、いいね、と言ったこと。

 

そんなことが思い出されて、

私はしてもらった以上のことは

何もできなかったなぁという思いが残りました。

 

Yさんは、私が今まで会った誰よりも不思議で、

誰よりも、ものごとの本質を貫く人でした。

 

たぶん、今いる場所で、

今まで以上に思いきっり生きていると思う。

そう思うと、寂しいけれど、

よかったなぁと思う。

 

 

・ ・ ・

 

 

庭に咲いたクリスマスローズを、部屋に。

 

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わずかな日差しと雨だけで、

毎年静かに咲いてくれます。