雨が上がって、
穏やかに晴れた 午後
娘が この春から通う
中学のクラス発表があり、
友だちと 一緒に見にいくのを
いってらっしゃーいと
見送った
それから
１時間ほど経って、
娘が ただいまーと
暗い声で 帰ってくる
どうだった？と聞くと、
最悪だったーと
不貞腐れた顔で言う
クラスごとに
順番に並んだ名前は
どれも 知らない名前ばかりで、
唯一 知っていたのが
小学校で いちばん苦手だった
男子だったという。。
娘が 好きだった子
（今は 男友だち）とは
別のクラスになり、
残念そうにしている
まだ 入学式前だというのに、
娘には 暗雲が
立ち込めているようだった
そんなの まだこれからで、
全然 大したことじゃないと
励ましてはみたものの、
娘にとって クラスのメンバーは
人生の一大事なんだった
あーあー
今日は 最悪の一日だーと
同じことばかり
ボヤき続けるので、
聞いているこっちも だんだん
イヤな気分になってくる
そんな日でも いいことが
３つくらいはあったはずだよ、
と 言うと・・
娘は しばらく考えて、
・同じ中学に上がる
知らない子から、
おしゃれだねーと言われたこと
・お昼に食べた オムレツが
美味しかったこと
・今日も、ぷぅこ（愛犬）が
可愛いこと
と、案外 スラスラ出てきた
３つ 出てきた
ご褒美に ポケットから
飴玉をひとつあげると、
まんざらでもなさそうな顔をした
最近、反抗期気味で
更年期気味の私と
バトルになることも
多いけれど・・
まだまだ
可愛いところもある
・ ・ ・
夕方、用事ができて
出かけることに
外の空気が 気持ちよかったので、
車はやめて 自転車で行くことにした
一つ 難関の坂があるけれど、
そこを登ってしまえば
何てことはない
ゼイゼイ 言いながら
坂を登り切って、
何気なく通り過ぎようとした
花屋の店先に
いろんな 花の苗が並んでいて、
どれも 破格の値段が付けられていた
ようやく あったかくなって、
そろそろ 花が欲しいと
思っていたところ
自転車を 脇に停めて、
ちょっとだけ
覗いてみることにした
お店に入ると、
切花も たくさん売られていて
どれも 元気で シャキッとしてる
奥には、バッチリ
お化粧した お姉さんと
（ 私と同じくらいか、ちょっと下）
黙々と働く おじいさんがいて、
どうやら 二人で
お店を切り盛りしている様子
私のほかに、常連さん風の
おばあさんが 何人かいて、
みんな 大きな声で 元気に喋ってる
並べられた花は
どれも 手ごろで、
見ていると どれもこれも
欲しくなってくる
そこを ぐっと堪えて、
花の鉢を 一つと
小さなアロエの鉢を 一つ、
それから いい香りがする
フリージアの切花を
買うことにした
レジに持っていくと、
お店のお姉さんは パッと見て
８３０円、と言った
安いので 税抜だとばかり
思っていたけれど、
どれも 税込なんだった
こんなに 安くて
いいんですか？と聞くと、
店主のおじいさんが
ときどき 謎のセールをするから
もっと 安いときもあるよ、
と親切に 教えてくれた
おじいさんは
耳が 不自由らしく、
何かあったら 私に聞いてと
ぶっきらぼうで チャキチャキとした
江戸っ子みたいな
お姉さんだった
その花屋さんが入った 建物には、
ほかにコーヒー豆屋と 和菓子屋、
中古ピアノのお店が入っていて、
なんだか 自分の好きなものを
寄せ集めたような 場所だった
さらに、
空いたスペースには
プラスチックのテーブルと
椅子が 置いてあって、
それぞれのテーブルで
お年寄りがコーヒーを飲みながら
座談会をしているようだった
そんな様子を 見るともなく
ぼんやり眺めていたら
「マリコさん、こっちこっちー」
と 後ろから声がした
びっくりして 振り向くと、
知らない おばあさんが
別のおばあさんを
手招きしているところだった
知らない 場所にいた
知らない おばあさんが
自分と同じ名前だと知って、
ちょっと 嬉しくなる
いつもは 車でほんの数秒で
通り過ぎてしまう
場所だったけれど、
中を覗いてみると
まるで 昭和の雰囲気で
そこだけ 時間が止まってる
みたいだった
自転車のカゴに
花と苗を入れて
ほかの用事も済ませて、
ほくほくとした 気分で
坂道を下った 帰り道
今日あった
いいことを３つ、
思い浮かべてみた
・いい花屋さんを見つけたこと
・元気な お年寄りをたくさん見たこと
・帰り道に、いい風景が見れたこと
全部 バラバラのようでいて、
全部 繋がってるところが
いいんだなと思った
・ ・ ・
春って やっぱり、
いい季節だな
